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こんにちは、行政書士見習いのかなたです。今日は「独身高齢者がペットを飼う際に考えるべきポイント」についてお話しします。
ただペットを「飼いたい」だけでは不十分、「終生飼養」を全うする計画が必要です
独身高齢者がペットを飼うことは心身の健康に良い影響を与えると言われていますが、「かわいいから」「寂しいから」という理由だけで飼い始めると、後々大きな問題になりかねません。実は「終生飼養(しゅうせいしよう)」という責任を全うするための具体的な計画と準備が不可欠なのです。
なぜこのような準備が必要なのでしょうか。それは、動物愛護管理法第7条に「動物の所有者等は、その動物が命を終えるまで適切に飼養することに努めなければならない」と明記されているように、ペットの一生に責任を持つことが法的にも求められているからです。特に独身高齢者の場合、自分自身の健康状態や生活環境の変化によって、ペットの世話が困難になるリスクが高まります。
よくある誤解と事実
Q:「高齢だからこそペットは心の支えになるのでは?」
A:確かに支えになりますが、適切な準備が必要です。
厚生労働省の調査によれば、ペットを飼っている高齢者は孤独感が軽減され、活動量も増加する傾向にあります。しかし東京都福祉保健局の報告では、飼い主の入院や施設入所によるペットの引き取り相談が年間数百件も寄せられています。「心の支え」になるからこそ、お互いに幸せな関係を最後まで続けるための備えが必要なのです。
Q:「元気なうちは問題ないから、その時になったら考えればいい?」
A:早めの準備が重要です。
民法第974条では、自分が判断能力を失った場合の財産管理について、事前に任意後見契約を結ぶことが認められています。この仕組みはペットケアにも応用できます。認知症などで判断能力が低下した後では、ペットの世話に関する新たな契約や手配が法的に有効と認められない可能性があるため、事前の備えが重要です。
Q:「ペットホテルやシッターさえ頼めば大丈夫では?」
A:一時的な対応にはなりますが、永続的な解決策ではありません。
ペットホテルやシッターサービスは一時的な不在に対応するものであり、費用も1日数千円からと決して安くありません。仮に3か月の入院となれば30万円以上の費用が発生する計算です。また、民法第89条では動物は「物」として扱われるため、自分の判断能力が低下した場合、誰がペットのケアを判断するかという問題も生じます。
Q:「ペットも高齢になれば、自分と同時期に寿命を迎えるから大丈夫?」
A:ペットの寿命は種類や個体差が大きいです。
犬の平均寿命は約14年、猫は約15年ですが、小型犬では20年近く生きる個体もいます。自分の年齢とペットの推定寿命を考慮した上で、「もしも自分が先に逝ってしまったら」という最悪のシナリオも想定しておくことが大切です。民法第896条の相続の規定により、遺言がない場合はペットも相続財産として法定相続人に引き継がれますが、ペットの福祉を第一に考えてくれる人とは限りません。
だからこそ、終生飼養のための準備が欠かせません
独身高齢者がペットと幸せに暮らすためには、以下の対策を講じることをお勧めします:
ペット信託の検討:
民法第89条では動物は「物」とされていますが、信託法に基づくペット信託を活用すれば、自分に万が一のことがあった場合でも、ペットのケアのための資金と世話を託す人を法的に確保できます。任意後見契約とペットケア条項の追加:
自分が認知症などで判断能力を失った場合に備え、民法第974条に基づく任意後見契約にペットケアについての条項を追加しておくことで、ペットの世話についても法的に有効な指示を残せます。エンディングノートにペットについての希望を記載:
法的拘束力はありませんが、自分の意思を明確に残しておくことで、周囲の人にペットへの配慮を促すことができます。地域の支援制度の活用:
多くの自治体で「ペット見守りサービス」や「高齢者ペット飼育支援」などの制度が始まっています。例えば、東京都の一部地域では、民生委員と連携したペット見守りネットワークが構築されています。
近所の独身高齢者の方とペットについて会話している際に、「自分が倒れたらどうしよう」という不安を多く耳にします。しかし、適切な準備をすれば、その不安を大きく軽減できます。ペットとの暮らしは素晴らしいものですが、その責任も同時に引き受けることで、真の「心の支え」となるのではないでしょうか。
皆さんも、ペットとの永続的な関係のために、今日からできる準備を始めてみませんか?
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